絵画における光の質感表現は、作品の魅力を伝える上でたいへん重要です。本講演では、スペインの画家ホアキン・ソローリャの光輝く作品をとりあげ、絵画表現の美と科学の融合を探ります。ホアキン・ソローリャを長年にわたり研究されている平野文千氏を講師に迎え、作品研究の視点からご講演いただくとともに、分光イメージングや色材分析などの最新技術と、人文学的視点を交えた学際的な取り組みを紹介します。
*本講演会は、科研費23KK0185の成果の一部を報告するものです。
【日時】2026年1月10日(土)14:00〜16:00(13:45開場)
【場所】東京藝術大学上野キャンパス(音校側)国際交流棟3F コミュニティサロン
※東京藝術大学 上野キャンパス アクセスマップ(19番)
https://www.geidai.ac.jp/access/ueno
【主催】東京藝術大学未来創造継承センター
【助成】JSPS科研費23KK0185
【対象】どなたでもご参加いただけます
【参加費】無料
【参加申込】事前予約制、先着順
以下のフォームよりお申し込みください。(2026年1月9日(金)17時申込締切)
https://forms.gle/c4981bojVaREA42j7
【プログラム】
14:00〜14:10 報告「絵画における光の質感表現と再現に関する学際的な取り組み」(奥田 紫乃)
14:10〜14:50 特別講演「ホアキン・ソローリャ — 光あふれる海辺の画家の生涯と作品」(平野 文千)
14:50〜15:00 報告「絵画研究における分光イメージングの活用例」(岡嶋 克典)
15:00〜15:15 休憩
15:15〜15:25 報告「色材分析から見るホアキン・ソローリャの絵画」(田口 智子)
15:25〜16:00 ディスカッション(登壇者:平野 文千、奥田 紫乃、岡嶋 克典、六車 美保、司会:田口 智子)
※当⽇の進⾏の都合でスケジュールは一部変更となる可能性があります。

報告「絵画における光の質感表現と再現に関する学際的な取り組み」(奥田 紫乃)
絵画の表現において、光の質感を表現することは作品の主題を鑑賞者に伝える上で極めて重要です。絵画の質感を忠実かつ効果的に再現するための手法を提案することを目的として、国際共同研究に取り組んでいます。色彩学、文化財科学、照明工学、情報工学、感性工学、博物館学など、様々な分野の知見や技術を統合する学際的な取り組みについて紹介します。
*講演者プロフィール
奥田 紫乃(おくだ しの)/ 2001年 大阪大学大学院工学研究科建築工学専攻 後期博士課程修了、博士(工学)。現在、同志社女子大学生活科学部 教授。建築環境工学、照明工学、感性工学の見地から、光・視環境評価や視覚心理・生理に関する研究に従事している。最近では、絵画鑑賞時の光環境のほか、料理をおいしく見せる照明や、人の肌の色の見え方と照明の関係に関する研究に取り組んでいる。
特別講演「ホアキン・ソローリャ — 光あふれる海辺の画家の生涯と作品」(平野 文千)
ホアキン・ソローリャ・イ・バスティーダ(Joaquín Sorolla y Bastida, 1863-1923)は、19世紀末から20世紀初頭のスペインを代表する画家で、国際的にも活躍しました。バレンシアの海辺の風景にこだわり、光に満ちた鮮やかな色彩の作品で高く評価されています。本講演では、日本ではあまり知られていない画家ソローリャの生涯と作品に焦点をあてて紹介します。
*講演者プロフィール
平野 文千(ひらの ふみち)/ 早稲田大学、昭和女子大学を経て、成城大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学後、論文提出により博士(文学)を取得。19~20世紀初頭のスペイン美術、とくにホアキン・ソローリャの作品研究を専門とする。現在、「ホアキン・ソローリャと自然主義」について研究を進めている。第32回鹿島美術財団優秀賞受賞。

報告「絵画研究における分光イメージングの活用例」(岡嶋 克典)
絵画には無数の小さな色が2次元的に分布していますが、それぞれはある分光分布を有する光であり、照明光・絵画・観察者の相対的位置によって絵画の反射光は変化するため、絵画に関する物理的な情報を得るには、一般的なRGBカメラ撮影では不十分で、2次元の分光測定(分光イメージング)が必要となります。今回は、その原理等についてわかりやすく紹介します。
*講演者プロフィール
岡嶋 克典(おかじま かつのり)/1990年 東京工業大学(現・東京科学大学)大学院総合理工学研究科物理情報工学専攻博士課程修了、工学博士。現在、横浜国立大学教授。人間情報工学、認知脳科学、五感工学,バーチャルリアリティ、福祉システム工学に関する研究に従事している。最近では、内因性光感受性網膜神経節細胞の視覚特性や情報工学を活用した文化財研究にも取り組んでいる。
報告「色材分析から見るホアキン・ソローリャの絵画」(田口 智子)
絵画に使用される材料を明らかにすることは、作品を未来に継承する上で不可欠であると同時に、展示などの活用の際にも重要な情報を提供します。絵画における色材分析の概要を紹介するとともに、2025年に訪問したスペインのInstitut Valencià de Conservació, Restauració i Investigacióでのソローリャ作品の分析や保存修復の実例について報告します。
*講演者プロフィール
田口 智子(たぐち さとこ)/ 東京藝術大学大学院文化財保存学専攻博士後期課程修了。博士(文化財)。現在、東京藝術大学未来創造継承センター特任准教授、副センター長。専門は保存科学。材料科学的アプローチを中心に、芸術資源の保存・継承・アーカイヴにおける課題に取り組んでいる。
*司会・ディスカッサントプロフィール
六車 美保(むぐるま みほ)/ 奈良女子大学大学院にて博士前期課程・博士後期課程修了。博士(文学)。 奈良女子大学大学院在籍中に、前身である奈良女子高等師範学校時代の教育用教材の整理作業に携わり、デジタルアーカイブ化を進める。現在、京都大学総合博物館研究員として、大学所蔵資料の整理・保管事業に従事している。
【お問い合わせ】
東京藝術大学未来創造継承センター(担当:田口)
future@ml.geidai.ac.jp
※12月27日(土)~1月4日(日)は年末年始休業期間のため、お問い合わせへのご返信を休止いたします。期間中にいただいたお問い合わせは、1月5日(月)以降、順次対応いたします。