地域における博物館活動やアートプロジェクトの実践においては、地域住民が重要な役割を果たしています。近年では、このような住民参加型の活動をいかにアーカイヴ、評価し、次世代へとつなげていくかが課題となっています。
本講演会では、北海道大学大学院文学研究院 博物館学研究室の卓 彦伶氏をお招きし、博物館と地域社会との関係や、地域連携活動によってもたらされる社会的効果などについてご講演いただきます。あわせて、地域における文化活動を対象に、文化観光およびアーカイヴの観点から、2名の講演者に話題提供を行っていただきます。
本講演会はご好評いただいた特別講演会「博物館×学ぶ×遊ぶ」、「博物館×デジタル×ひと」に引き続き、博物館などで実践される教育プログラムを分析・評価し、新たな視点で捉え直すことによって文化芸術の担い手の裾野のさらなる拡大を目指す研究会の第三弾として実施いたします。
【日時】2025年8月22日(金)18:00〜20:30
【配信方法】zoomウェビナーによるオンライン配信(事前申込制、先着70名)
※アーカイブ配信は予定しておりません
【参加申込】以下のフォームよりお申し込みください。(8月21日(木)17時申込締切)
https://forms.gle/gbKTd8BFTtKuttXm8
※フォームに記入いただいたメールアドレスに、開催当日の朝までにzoomアドレスをお送りします。
【スケジュール】
18:00〜18:05 趣旨説明・田口 智子(本学未来創造継承センター 特任准教授、副センター長)
18:05〜18:50 特別講演「博物館活動の社会的価値の可視化に向けた実践と課題―伊丹市昆虫館「鳴く虫と郷町」を事例に―」卓 彦伶(北海道大学大学院文学研究院 講師)
18:50〜19:00 休憩
19:00〜19:20 話題提供(1)「博物館が創出する新たな社会的価値─文化観光政策に見る日中の展開─」朱 麗梅(北海道大学文学研究院 博士後期課程)
19:20〜19:40 話題提供(2)「地域におけるアートプロジェクトのアーカイヴは何を記録しているのか」倪 雪(東京藝術大学未来創造継承センター 特任研究員)
19:40〜19:45 休憩
19:45〜20:30 ディスカッション・質疑応答(登壇者:卓 彦伶、朱 麗梅、倪 雪、司会:田口 智子)
20:30 閉会予定
※当⽇の進⾏の都合でスケジュールは一部変更となる可能性があります。
【特別講演】博物館活動の社会的価値の可視化に向けた実践と課題―伊丹市昆虫館「鳴く虫と郷町」を事例に―
現代の博物館には、地域社会における多様な役割が求められており、それに応じて多様な活動が展開されています。これらの活動が地域にもたらした成果を適切に捉えるためには、市民にどのように受け止められたのか、関わった人々にどのような変容が生じたのかといった多角的な視点からの評価が重要です。本発表では、こうした博物館活動の「社会的価値」を可視化するための評価手法の現状と課題について整理し、実例として伊丹市昆虫館が実施する地域連携事業「鳴く虫と郷町」を対象に実施した社会的価値の測定プロセスとその結果を紹介します。
*講演者プロフィール
卓 彦伶(北海道大学大学院文学研究院 講師)
台湾出身。北海道大学大学院で博士(文学)を取得後、民間シンクタンクを経て現職。専門は博物館学。地域連携による社会的効果や、市民主体で運営される小規模博物館の実践を研究しています。近年は地域課題を第一線で向き合う現場の小規模博物館の学芸員の活動にも注目しています。また、姿を消しつつある北海道各地の「ばん馬大会」に関する取材も、マイペースに進めています。
【話題提供(1)】博物館が創出する新たな社会的価値─文化観光政策に見る日中の展開─
近年、政策の変化により文化観光が強調され、博物館への影響も深まっています。特に日本では2022 年の博物館法改正により、従来の社会教育法に加え、文化芸術基本法の精神が反映され、博物館の文化観光への取組が明記されました。一方、中国では2016年の「全域旅游」や2018年の文化観光部の設立を契機に、文旅融合が本格化し、博物館の観光的役割も注目されています。本発表では、日中の文化政策の変化と二つの事例を通じて、文化観光の中で博物館が地域社会に果たす新たな役割と創出された価値を紹介します。
*講演者プロフィール
朱 麗梅(北海道大学大学院文学院 文化多様性論講座 博物館学研究室 博士後期課程在籍)
中国・貴州省の生態博物館(エコミュージアム)に勤務した後に来日し、北海道大学大学院で修士課程を修了。現在は同研究室において、博物館における地域の歴史文化資源の活用に関する研究を進めており、特に文化観光を背景とした博物館の活動に焦点を当てています。
【話題提供(2)】地域におけるアートプロジェクトのアーカイヴは何を記録しているのか
各地域で行われているアートプロジェクトでは、制作の過程や地域との関わり、そこで生まれるつながりなども大切にされています。こうした活動を長期的に継続したり、さらに広げていくためには、アーカイヴを通して振り返ることが重要です。今回は、「全国アート・プロジェクト資料(※)」に着目し、主催者たちがどんなことを、どのように記録しているのかを紹介しながら、その特徴や課題について考えます。
※「全国アート・プロジェクト資料」:アーツカウンシル東京およびNPO法人アート&ソサイエティ研究センターが収集してきた、国内外におけるアート・プロジェクトやパブリック・アートに関する書籍・カタログ・資料群(2023年3月、未来創造継承センターに寄託)
*講演者プロフィール
倪 雪(東京藝術大学未来創造継承センター 特任研究員)
東京藝術大学大学院先端芸術表現科専攻修士課程修了。地域が抱える課題に対して、イベントの企画やフィールドリサーチ、実践的な参加を通じて、資源活用という視点からアプローチしています。また、東京藝術大学における中国人留学生の歴史や活動にも関心を持ち、分野を越えた連携や企画にも携わっています。
【お問い合わせ】
東京藝術大学未来創造継承センター(担当:田口)
future@ml.geidai.ac.jp