このたび、東京藝術大学未来創造継承センターは、中西夏之のアトリエにて保管されていた資料一式をご遺族から受贈しました。
中西夏之(1935–2016)は戦後の日本を代表する現代美術家です。東京藝術大学絵画科油画専攻を卒業後、活動初期には駅のホームや電車内で実施した「山手線事件」(1962)、第15回読売アンデパンダン展で発表した《洗濯バサミは攪拌行動を主張する》(1963)などで知られています。また、高松次郎、赤瀬川原平らと「ハイレッド・センター」を結成し、銀座の路上を白衣姿で清掃する「首都圏清掃整理促進運動」(1964)などを実施したほか、中西は舞踏家の土方巽や「山海塾」などの公演における舞台美術を多く手がけました。1960年代末からは絵画制作を再び本格化させ、《山頂の石蹴り》、《弓形が触れて》、《紫・むらさき》、《4ツの始まり》、《背・円 背後からの白》などの連作を晩年に至るまで発表しました。
さらに、1996年10月から2003年3月まで東京藝術大学絵画科油画専攻の教授を務め、山手線や不忍池、犬吠埼でゼミナールを実施する独自のカリキュラムを展開しました。
受贈した中西夏之旧蔵資料は、8千枚以上に及ぶ素描をはじめ、写真、映像、型紙、手稿、書簡、蔵書、印刷物など多岐にわたります。これらは中西の創作過程を伝えるのみならず、絵画を考察した原稿や美術家、評論家らとの交信記録、美術教育に関する草稿など、戦後日本における前衛的な表現や歴史を伝える大変貴重な資料です。
東京藝術大学未来創造継承センターでは、上記の資料ととともに学内に保管されている中西の教育関連資料を整理し、「中西夏之アーカイヴ」として公開に向けて尽力してまいります。資料公開の準備が整いましたら、ウェブサイトにてお知らせいたします。
戦後の現代美術や美術教育をはじめ、様々な専門分野において新たな創造や研究を創出する契機として、ご活用いただければ幸いです。
また、2026年3月14日から、国立国際美術館で開催されます「中西夏之 緩やかにみつめるためにいつまでも佇む、装置」展には、本資料の一部が展示されますので、是非ともご覧ください。
東京藝術大学未来創造継承センター所管資料(中西夏之アーカイヴ/中西夏之旧蔵資料)
https://future.geidai.ac.jp/archives/
問い合わせ
未来創造継承センター(担当:平)
future@ml.geidai.ac.jp